変わり種の面接と内定拘束(1991年8月、大橋直久)

就職活動中、友人同士のあいさつは「どう?調子は?」。お互いの活動状況を報告しあい、情報交換をし、慰めあい、励ましあい、体験談を披露しあいます。そんな会話に出てきた変わり種面接、厳しい拘束のいくつかを集めてみました。(大橋直久)

面接

面接といっても、会社の会議室ばかりが会場ではありません。「面接の通知が来たんだけど、ホテルの一室が会場なの。本当に会社からなのか疑っちゃった」という女子。行ってみたらちゃんと面接がありホッとしました。

15人もの面接官

面接のスタイルもいろいろ。「1人で15人もの面接官に囲まれた。前から横から、後ろからも質問が飛んでくる感じで、拷問のようだった」「トイレ休憩もなしで4時間に及ぶ面接。内容は雑談めいているのだけど、ときどき偉いような人が部屋に入ってきて、鋭いこと質問した」「ダンスや体操を半日やった」

控室の態度チェック

企業は学生のどんなところを、いつみているかわかりません。面接の控室での学生の態度を、若手社員がしっかりチェックしていた、という話もあります。

「誓約書に印を押して」(1991年8月1日の大手証券)

1991年は証券や銀行の不祥事が相次いでいます。大手メーカーを受けた男子は「損失補てん先リストにわが社の名がなかったことをどう思いますか」と聞かれました。

当の証券会社については「1991年8月1日に大手を訪問したら『本当に入社意思のある人は、ここで内定をだしますから、誓約書に印を押してください』と言われた」という話が、まことしやかに伝わっています。

自己紹介書に「恋人はいますか?」

質問のなかでは「月で何日か過ごすとき、何を持っていけばよいか」「無人島に漂流したときに必要なものは何か」「ミニスカートの流行とその年の米の豊作との因果関係は?」など、機転を利かした答えが求められるものがありました。

「自己紹介書に『恋人はいますか』なんて。大きなお世話と思っちゃった」という女子学生もいました。

内定後の拘束

内定後はホテル住まい

内定後には拘束がかかります。金融関係志望の男子学生は「1991年7月上旬、5泊も有名ホテルに住むハメに。期末試験でも大学までリクルーターがついてくる」。「拘束をくぐりぬけて同業他社を訪問しようとしたら、その会社の入り口に拘束を受けていた会社の社員が立ちはだかっていて連れ戻された」なんて人もいました。

ディズニーランドや海上に隔離

会社訪問解禁日には、ディズニーランドや富士急ハイランド、あるいはクルーザーで海上へ出たり、郊外の工場見学をさせられたり、多くの学生が都心から隔離されました。

ところで、複数の内定をとった学生はどうやって1社に絞るのでしょう。断りに行くのもまたドラマです。

面接で「結婚しても仕事は続ける?」

「結婚しても仕事は続けますか?」--就職活動中の女子学生は、面接で必ずといってよいほど聞かれるらしい。なかには「恋人がいますか」と尋ねた企業があったそうです。内定をとるため、その場では相手に気にいられるような返事をみんな用意しているようです。